ピュテアス|イギリス生活

イギリス地方選挙が行われました


先週木曜日、5月6日に、イギリス地方選挙(UK Local Elections 2021)が行われました。

イギリスでは1918年以降、木曜日に選挙を行うことが慣習となっているそうです。
The Guardian: Why are British elections always held on Thursdays?

私は選挙権がないので投票できません*が、私以外の同居家族3名はイギリス人なので、最寄りのPolling Station(投票所)までついて行ってみました。

配偶者ビザで5年居住すると、永住権または市民権(イギリス国籍)の申請が可能となります。
市民権を取得するとイングランドでの投票権が得られますが、日本は二重国籍を認めていないので、日本国籍を維持できなくなります。

イギリスに住むからには投票権も欲しいところですが、日本国籍を放棄・・・したくないなあ。

ちなみに・・・

日本のパスポートは世界一!?

英コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズの「ビザなしで外国への渡航が可能な国の数」を調査したランキングで、日本のパスポートが、4年連続1位(2021年時点で191カ国)を獲得しました!
The Henley Passport Index: Global Ranking 2021

・・・やはり、手放したくないですねえ。

一方、ウェールズでは2019年11月より、スコットランドでは2020年2月より、外国人の投票権が認められています。

スコットランドのマイケル・ラッセル内閣官房長官は、この決定について以下のように述べています。

”……It also reflects the reality of modern Scotland: a nation committed to robustly meeting our duties to the treaties that safeguard our human rights, that welcomes those who seek to join our society, and gives a democratic voice to the most marginalised in our communities.
(……また、この決定は現代のスコットランドの現実を反映しています。つまり、人権を保護する条約に対する義務をしっかりと果たすことを約束し、私たちの社会に参加しようとする人々を歓迎し、コミュニティで最も疎外されている人々に対して、民主的な声を届けているということです。)

……This extension is especially meaningful in the atmosphere of uncertainty surrounding the UK Government’s plans for the immigration system – but instead of instilling insecurity and fear, this Government is using the powers that it has to send the message that Scotland is open, welcoming, and home to all those who so choose.
(英国政府の移民制度に関する計画が不透明な中、この投票権拡大は特に意味のあるものです。本政府は、人々に不安や恐怖を与えるのではなく、『スコットランドは希望するすべての人を歓迎しているし、あなたたちのホームですよ』というメッセージを届けるために、その力を使っているのです。) “

Scottish Government: Right to vote extended

素敵じゃないですか?

Contents

イギリス地方選挙とは?

さて、本題に入りましょう。

本記事では、主にイングランドの選挙についてお話しします。

まず、今回イングランドの多くの地域で行われた Local council elections(地方議会選挙)というものは、地域の公共サービスの担当者や、運営方法を決めるものです。

イングランドには、388の地方議会があり、合計約2万人の議員がいます。

今年の選挙は、新型コロナウイルスの流行によって延期された昨年の投票と合わせて行われたため、争われる議席の数が、過去最多となりました。
BBC News: Local elections 2021: A simple guide to English council elections

コロナの症状が出た場合、投票日の17時まで、緊急代理投票を申し込むことができるようになっていました。

今回の選挙では、143の地方議会において、学校、図書館、ゴミ収集などの地域サービスの運営者が決定されます。

また、この選挙結果は、各政党の全国的な人気度を示すことにもなるため、注目されています。

錯綜した選挙内容とウェスト・オブ・イングランド

実は、これまでお話ししたこと(地方議会選挙)は、この日行われた選挙の一部分になります。

今回の選挙、当のイギリス人達にしてみても、非常に分かりにくく複雑なものとなっていました。

ちょっと整理してみましょう。

そもそもイギリスというのは、
正式名称 ‘United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland‘、つまり「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」という、4つの国(イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランド)からなる連合王国です。

英語で「England(イングランド)」と言えば、文字通り「イングランド」しか指さないので、日本語でいうところの「イギリス」を表す場合は「the UK」と言います。

そして、イングランドの多くの地区では、大規模な地域の括りとしての「カウンティー・カウンシル」と、その中にある小規模な括りとしての「ディストリクト・カウンシル(「バラ」または「シティ・カウンシル」)」の2層の地方自治体が存在します。(1つの地域が2つの自治体に所属しているということです。)
日本でいう市と県のようなものでしょうか。大自治体と小自治体で、役割が分担されています。

地域によっては、更に小規模な「タウン」または「パリッシュ」という自治体もあります。

しかし、全ての地区がそれらに当てはまるわけでもありません。

例えば私の住んでいるバースは、「Bath and North East Somerset(バース・アンド・ノース・イースト・サマセット)」という、上記のカウンティーとディストリクトが合わさったような、「ユニタリー・オーソリティー(単一自治体)」です。通称、「BANES/B&NES(ベインズ)」と呼ばれています。

それではBANESの住民はBANESの選挙をしたのだろうと思えば、それも少し違って、
今回の選挙では、「West of England(ウェスト・オブ・イングランド)」という更に大きな地域の括りを対象としていたのです。

ウェスト・オブ・イングランドは、2017年にできた新しい自治体の枠ぐみで、3つの地域(BANES・Bristol・South Gloucestershire)がそれにあたります。
West of England Combined Authority: What is WECA?

バースにはMayor(メァ)(市長)がいますが、ウェスト・オブ・イングランドにもMayor(自治体長)がいます。
より権威があるのは、ウェスト・オブ・イングランドのMayorです。

5月6日の選挙は、イギリス全土で行われましたが、地域によって内容が異なりました。
例えば、地方議会、市長、地方警察の公安管理官、ロンドン議会、スコットランド議会、ウェールズ議会などです。

BANESの住民は、ウェスト・オブ・イングランドの「Mayor(自治体長)」と、Avon and Somerset Police(エイボン・サマセット警察)の「Police and Crime Commissioner(警察組織を監督する公安管理官)」の選挙を行いました。

ウェスト・オブ・イングランドの現Mayorは、保守党のティム・ボウルズ氏(5月9日まで)です。

今回出馬したのは、Conservative(保守党)のサミュエル・ウィリアムズ氏、Labour(労働党)のダン・ノリス氏、Green(緑の党)のジェロム・トーマス氏、Liberal Democrat(自由民主党)のスティーブン・ウィリアムズ氏です。

今後4年にわたり、ウェスト・オブ・イングランドという大きな自治体のトップを、保守党が受け継ぐのか、別の党(労働党が有力)が担うことになるのかというのが焦点となります。

いざ投票所へ

投票は7時〜22時まで行われていて、私たち家族は18時頃に歩いて向かいました。

投票所となっていたのは、ソーシャル・クラブと呼ばれる小規模なコミュニティーセンターで、普段は会議をはじめ、ヨガ・ダンス・語学などのクラス、コンサートにDJイベントまで、さまざまな用途で地域の住民に利用されているようです。

その日は投票会場となっていたホールのすぐ近くの部屋から、歌の発声練習をしている声が聞こえました。

入り口で案内をしてくれたのは、マスクをしたボランティアの女性。投票権のない私も入れるか聞いたところ、「全然大丈夫ですよ、どうぞ」と入れてくれました。「どちら出身なの?」「日本です」「あらいいわね」そんな感じでした。

設置されていたアルコールジェルで消毒して、並んで順番を待ちます。数人しかいなかったので、待ち時間は2分ほど。私は家族が投票している間、棚に並べられたヨガクラスやバンドのフライヤーを眺めたり、うろちょろしたり。それも2分ほど。

入口とは反対側のドアから出て、おしまい。あとは結果を待つだけです。

開票結果

さて、ウェスト・オブ・イングランドのトップは誰になったと思いますか?

結果は、125,482票 対 85,389票 で、労働党のダン・ノリス氏が、保守党のサミュエル・ウィリアムズ氏をおさえて勝利しました。
BBC News: Mayor of the West of England

2021年5月10日から、労働党のダン・ノリス氏がウェスト・オブ・イングランドのMayorを務めています。

一方、エイボン・サマセット警察の公安管理官は、保守党のマーク・シェルフォード氏が選出されました。
BBC News: Elections 2021: Mark Shelford elected as Avon and Somerset’s PCC

まとめ

本記事では、2021年5月6日に行われた、イングランド(の中でも主にBANES)の地方選挙についてお伝えしました。

今回の選挙では、ウェスト・オブ・イングランド含む多くの市長選で労働党が勝利しましたが、地方議会選では保守党が圧倒的に優勢でした。そんな中、保守党はBrexitに投票した労働者階級の間で人気が高く労働党は若者や知識人、都市居住者の間で支持を得やすいという見方もあります。しかし、保守党の緊縮財政によって生きづらさを感じ、危機感を覚えている労働者階級の人々もいるので、もちろん一概に言えることではありませんが、そういった傾向もあるということは、ひとつ頭に残しておきたいと思いました。

何はともあれ、よりよい世の中に向かっていくよう祈りながら、今後もイギリスを見守っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!

  • URLをコピーしました!
Contents
閉じる