「私の鉄工所にあるリソースを使って、反暴力における社会的意識を、前面に押し出すことができないだろうか」
英国鉄工所(British Ironwork Centre)のクライブ・ノールズ氏は、ナイフ・クライムをめぐるドキュメンタリーを見た後、壮大なプロジェクトの実行を決意しました。
数々の努力と協力によって完成した「ナイフ・エンジェル」は、10万本のナイフで作られた巨大な天使像(27ft / 8.2m、3.5ton / 3500kg)で、英国初の「暴力と攻撃に反対する国家記念碑」となっています。

彫刻家は、アルフィー・ブラッドリー氏です。制作には2年が費やされました。
匿名のナイフ・バンク
これら、約10万本のナイフは、英国内の43の警察署が実際に押収していたものと、各地に設けられた200のナイフ・バンクに匿名で提供されたものです。
回収されたナイフの約3割には、血などの体液が付着していたそうです。(一本ずつ消毒してから制作に使用されました)
匿名でナイフを手放すことができるため、当事者たちに、暴力を放棄するきっかけが与えられているのです。
この天使像は、ナイフ・クライム(刃物による犯罪)や、あらゆる形態の暴力・攻撃の問題に対する意識を高め、社会変革の重要性を確固たるものにするため、そして、そのような暴力的で軽率な行動によって失われてしまった命を追悼するために、デザインされました。

犠牲者の家族に呼びかけたところ、80以上の家族が、ナイフにメッセージを刻むことを希望したそうです。これらは翼の部分に使用されました。
ANTI-VIOLENCE TOUR
「ナイフ・エンジェル」は2018年からイギリス中を巡回し、
‘Save a Life, Surrender Your Knife(ナイフを手放し、命を守ろう)’
というキャンペーンのもと、社会の意識向上や、子どもや若者、大人への「教育」に焦点を当てた変革活動を率いています。
全国反暴力ツアー(NATIONAL UK ANTI-VIOLENCE TOUR)の一環として、すべての開催地は、「ナイフ・エンジェル」を使った、28日間の集中的な教育ワークショップやプログラムを実施することが求められています。
開催地は、難しいテーマ(「攻撃的な行動」、「凶器の携帯」、「問題解決の手段としての暴力の利用」など)についての会話に火をつけるために、「ナイフ・エンジェル」を教育プログラムのポイントとして利用します。
天使像@ヘレフォード大聖堂
今回私が「ナイフ・エンジェル」を見ることができたのは、幸運な偶然でした。
この日、私たち家族は元々ヘレフォードを観光する予定でいて、大聖堂まで来ていました。
到着した時は何もなかったのですが、一通り観光を終えて正面へ戻ると、不気味で巨大な像が立っていたので驚きました。


私が訪れたのは6月14日でしたが、ヘレフォードでの展示期間はまさに6月14日〜7月12日だったのです。
近づくほどにその迫力は凄まじく、ナイフ一つ一つで形作られた像の繊細さに感心しつつも、言い知れぬ重たい感情に包まれるのでした。
「ナイフ・エンジェル」まとめ
こんなにも多くの刃物が、一体どれだけの人の体と心を傷付けてきたのでしょう。
今一度お伝えしますと、この天使像に使用されたのは、実際に英国中の警察署が押収した刃物と、ナイフバンクに当事者や関係者が放棄した刃物です。
10万本の刃物を受けとめた天使は、計り知れない悲しみ、苦しみ、許しと救いを表しているように感じます。
社会構造の根本的な改善策を、私たちは模索し実行していかなければなりません。
このような大きな問題を前に、私はいつも無力さを痛感しますが、小さなことでもできることから参加していきたいです。

2018年に始まったこのツアーは、今後も英国各地でスケジュールされています。
詳しくは、こちらの公式ホームページでご確認くださいね。
