今、イングランドでは、誰でも無料で、何回でも、簡単に新型コロナウイルスの検査ができます。
これは、イギリス政府が4月9日から拡大した検査計画によるもので、イングランドの全市民に対して、無償で Rapid Antigen Test(迅速検査)キットを提供しています。
イギリスではワクチン接種者が順調に増えていて、ロックダウンの制限も、段階的に緩和されてきています。
先月4月12日から、必要不可欠でない店(スーパーや薬局以外)の営業と、パブやレストランの屋外営業が再開され、今日(日本時間の昨日、5月17日)からは、ついに屋内営業も再開されました。美術館も今日から再開されたため、早速行ってきたところです。
こういった努力が無駄にならないようにするためにも、今後は「検査がさらに重要になる」とボリス・ジョンソン首相は言っています。
The Guardian: Everyone in England to be offered twice-weekly Covid tests, PM to say
この迅速検査キットは無症状の人を対象にしたものです。新型コロナウイルスの症状が既にある人などは、PCRテストを受ける必要があります。こちらも無料で、自宅または検査会場(ドライブスルー有り)で受けられます。
UK Government: Get a free PCR test to check if you have coronavirus (COVID-19)
ラテラルフロー検査
イングランド全市民に無償提供されている迅速検査(Rapid Antigen Test)について、簡単にまとめます。
方式 | ラテラルフロー |
結果までの時間 | 30分 |
場所 | 自宅 または 検査会場 |
入手方法 | 検査会場・薬局・職場・郵送(オンライン)など |
検査キットBOXを、週2回受け取ることができます。使い切ったり、少なくなったら、何度でももらえます。
オンラインで注文すると、翌日か、遅くとも2日で届きます。もちろん送料無料です。ロイヤルメールで届きました。ロイヤルメールへの手厳しい評価をたまに目にしますが、個人的には嫌な思いをしたことはありません。
精度はどのくらい?
保健省は「ウイルス量の多い人(拡散させる可能性の高い感染者)を95%以上検出する」としていますが、リバプールで行われた検査では「無症状かつ感染力の高い人を67%しか検出できなかった」そうです。
The Guardian: Covid-19: how accurate are lateral flow tests?
つまり、陰性と判定されたら、ある程度の安心感が得られますが、絶対に感染していないという保証はありません。
とにかくやってみた
箱には、7回分のキットが入っていました。1回分を並べてみます。
左: 右から時計回りで、チューブホルダー、長い綿棒、抽出チューブ、抽出のための液体、試験紙の入った袋、ゴミ袋
右: 説明書
検査の流れはこうです。
- 検査する場所と手を清潔にする
- 試験紙を取り出し、安定した場所に置く(30分以内に使うこと)
- 液体をチューブに入れる
- チューブをホルダーに固定する
- 鼻を噛む
- もう一度手を洗うか消毒する
- 綿棒を取り出す(柔らかい方は触らない)
- 綿棒の柔らかい方で、左右の扁桃腺を4回ずつこする
- 同じ綿棒で、片方の鼻の奥(うっと不快に感じるくらいが目安)を10回、円を描くようにこする
- 綿棒をチューブの中の液体と混ぜる(15秒間、回転させながら押し付けるように)
- チューブをつまみながら、綿棒についた液体を全てしぼり落とす
- チューブのキャップを閉める
- 試験紙の「S」のところに、2滴落とす
- 30分待つ
結果は・・・
Cに線 | 陰性 |
CとTに線 | 陽性 |
Tに線 または 線なし | 無効 |
Cだけに線。よかった!
やはり、ホッとします。
Cに線が現れたのは、Sに液体を落としてからほんの1分前後でした。でも、説明書には「陽性の結果は20分後に出ることがあるが、時間がかかることもあるので、必ず30分待たれし」と書いてあるので、待ちました。Tに線が出なくてよかったです。
検査が終わったら、陰性、陽性、無効にかかわらず、NHSに報告をします。
電話かオンラインでできますが、オンラインが早くて便利です。
ウイルスのことをより深く知っていくために、性別や、自分がどの民族グループに当てはまるか(私ならAsian)なども選ぶ項目がありますが、「答えない」という選択肢も用意されています。
陽性になった場合は、自分だけでなく同居している人も全員、ローカルガイドラインに従って、自己隔離が必要になります。NHSに報告をして、連絡を待ちましょう。偽陽性ではないか確かめるためにも、PCR検査を受けることになります。
まとめ
本記事では、現在イングランドで無償提供されている新型コロナウイルスの迅速検査キットの体験についてお伝えしました。
この検査計画に対しては、賛否両論です。
誰でも無料で簡単に検査ができるため、陽性者はすぐに気づくことができ、感染拡大を防げることがあります。また、少しでも体調が悪くなる度に、「コロナにかかっちゃったかな」とびくびくすることも減るでしょう。
しかし、精度や自己隔離のサポートが十分でないため解決策にならないという声や、お金の無駄遣いだという批判もあります。
私個人の見解としては、ないよりはいいんじゃないかな、と今のところ感じています。どれほどのお金が使われているのか分かりませんが、これで多くの命が救われるのなら、正しい使い方なのではないかと思います。無料なので、本当に気軽に検査することができます。結果が不安なら、数回検査し直すことだってできます(同じもので再利用はできません)。
「偽陰性のせいで、感染が広がる」という声については、陰性だからといって油断をすれば、そこで自分がウイルスをもらってしまう危険もあるわけなので、無症状かつ「陰性」という結果で行動様式が極端に変わる人は少ないと思います。
ただ、体調不良で不安な時、検査する手段がなければ大事をとって休むところを、手軽に検査できるために検査をして「陰性」となれば、家を出てしまうこともあるでしょう。それがもし「偽陰性」だったら・・・?「偽陰性のせいで、感染が広がる」ことも、中にはあるかもしれません。
検査キットのせいで感染を「防げる」ことと、「広げる」こと、どちらもあるかもしれませんが、どちらが多いか、というのはポイントになるかと思います。「無症状かつ感染力の高い人を67%しか検出できなかった」と聞くと「あんまり意味ないのかな」と感じてしまいそうになりますが、その67%の人たちは、検査をしなければ、ただ無症状だったわけです。67%の「無症状かつ感染力の高い人」を検出「できた」というのは、実はすごく意味のあることのような気がします。
皆さんはどう思いますか?日本にもあったらいいなと思いますか?イギリス在住の方は、利用したことがありますか?
それでは、今日はこのあたりで。